植物の生体膜の機能解明
(植物生体膜機能研究室:長野)
生物は膜(細胞膜)に囲まれた細胞から構成され、特に真核生物は膜で覆われた細胞小器官(オルガネラ)をもっています。植物生体膜機能研究室(担当教員:長野稔)では、「生体膜」の機能に着目し、植物の生育や環境ストレス耐性との関りについて研究をしています。具体的には以下の2つのテーマについて研究しています。
1. 細胞膜に点在するナノドメインの研究
細胞膜には、「ナノドメイン」とよばれるナノスケール(直径約200 mm)の特殊な領域が点在しています。当研究室では、ナノドメインが多くの免疫タンパク質の足場となることにより、植物免疫を制御することをこれまでに解明しています(Nagano et al., Plant Cell, 2016; Ukawa et al., Plant Physiol., 2022)。ナノドメインを構成する脂質を直接イメージングすることにより、病害応答時のナノドメインの動態や機能、またナノドメインの形成機構について研究しています。
2. 生体膜を構成するスフィンゴ脂質の機能
細胞膜やオルガネラ膜は脂質によって形成されています。中でも「スフィンゴ脂質」は微量な脂質にもかかわらず、植物の生育や環境ストレス耐性に大きな影響を与えます。当研究室ではこれまでにスフィンゴ脂質が植物の酸化ストレス耐性や免疫などに関わることを明らかにしています(Nagano et al., Plant Physiol., 2012; Ushio et al., Plant Sci., 2023など)。生体膜や植物の環境耐性におけるスフィンゴ脂質の機能について研究しています。
Ushio M., Ishikawa T., Matsuura T., Mori IC., Kawai-Yamada M., Fukao Y., Nagano M. (2023) MHP1 and MHL generate odd-chain fatty acids from 2-hydroxy fatty acids in sphingolipids and are related to immunity in Arabidopsis thaliana. Plant Sci., 336, 111840.
Ukawa T., Banno F., Ishikawa T., Kasahara K., Nishina Y., Inoue R., Tsujii K., Yamaguchi M., Takahashi T., Fukao Y., Kawai-Yamada M., Nagano M. (2022) Sphingolipids with 2-hydroxy fatty acids aid in plasma membrane nanodomain organization and oxidative burst. Plant Physiol., 189(2), 839-857.
Nagano M., Ishikawa T., Fujiwara M., Fukao Y., Kawano Y., Kawai-Yamada M., Shimamoto K. (2016) Plasma membrane microdomains are essential for Rac1-RbohB/H-mediated immunity in rice. Plant Cell, 28(8), 1966-1983.